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神坂雪佳『百々世草』第1巻「もゝよ草」1909年(ウッドフレームで額装したプリントのイメージ)

神坂雪佳『百々世草』「もゝよ草」1909年

100年前、この絵は壁ではなく「本の中」にあった

白い菊と、黒に近い葉。
背景を大きく分ける、金と銀。
いま一枚のアートとして見るこの絵は、もともと額に入れて壁に掛けるための一枚として出版されたものではありません。

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1冊に20図。

3冊合わせて、全部で60図。

そして、この菊の図は、その60図の一番最初に置かれていました。

1909年、京都で出版された『百々世草(ももよぐさ)』。

ページをめくって絵を楽しむ、3冊組の画帖の中に収められていた一図です。

現代の感覚でいえば、手元でページをめくりながら図を楽しむ「作品集」に近いものです。

第1巻の表紙
第1巻の表紙
第1巻の目次
第1巻の目次
巻頭の図
巻頭の図

本の中へ

『百々世草』って、どんな本?

『百々世草』が出版されたのは、明治42年(1909)5月から翌1910年2月にかけて。

京都の山田芸艸堂、現在の芸艸堂から刊行されました。

小説や歴史書のように、文章を読むための本ではありません。

神坂雪佳による図を、多色木版で摺って収めた和装の画帖です。

高さは約31cm。

第1巻、第2巻、第3巻にそれぞれ20図ずつ、全60図が収められています。

  1. 第1巻20図
  2. 第2巻20図
  3. 第3巻20図
  4. 合計60図

100年以上前の人は、約31cmの本を手元で開きながら、これらの図を一枚ずつ見ていたことになります。

では、その本の最初の一枚を開いてみましょう。

最初に現れるのが、この図です。

神坂雪佳『百々世草』第1巻「もゝよ草」全図

白い菊の花が、左上から右下へ。

その後ろには大きな金茶色の曲線が入り、右側には銀色の地が広がります。

葉は暗い褐色から黒。

色も形もかなり大胆です。

そして、ここで原本の目次を見てみると、少し意外なことが分かります。

第1巻の目次にある「百々世草第一巻目次」と「もゝよ草」
第1巻の目次

「菊」の絵なのに、題名は「菊」ではない

この図を所蔵するクリーヴランド美術館は、英語で「Chrysanthemums(菊)」と紹介しています。

見たままなので、分かりやすい名前です。

ところが、1909年の原本にある第1巻の目次には、「菊」という図題はありません。

巻頭に記されているのは、

「もゝよ草」

という名前。

『百々世草』という本そのものと同じ言葉です。

つまりこれは、後世に「菊の図」として一枚ずつ鑑賞することのできる作品である一方、もともとの本では、60図からなる『百々世草』そのものの名前を冠して最初に登場した一図でした。

近づいて見る

白い菊、暗い葉、金茶色の部分の拡大

金色に見えるのではなく、本当に金色を使っていた

画面で見ると、まず目に入るのは白い菊です。
でも、原本の技法を知ると、その後ろも気になってきます。
この図は、多色木版。
通常の色だけでなく、金と銀を使って摺られています。
画像の中で金色や銀色に見えるように描いた、というだけではありません。
白い花と暗い葉の背後に、金と銀を使った面が組み合わされています。

金茶色の大きな曲線と右側の銀地の境界

背景まで、ひとつの大きな形にする

金茶色の部分を追ってみると、画面の左から中央にかけて、大きな曲線を描いていることが分かります。
その外側にあるのが銀色の地です。
そこへ、白い菊が左上から右下へ斜めに走ります。
「花を描いて、その後ろを背景色で埋めた」というより、

大きな曲線。
斜めに連なる花。
暗い葉。

それぞれの形が重なって、一枚の画面をつくっています。

原本右上の朱印「帝國圖書館藏」の拡大

右上の朱色は、図書館の印

国立国会図書館で公開されている原本を拡大すると、画面の右上に、朱色の四角い印があります。
印の文字は「帝國圖書館藏」。国立国会図書館の前身、帝国図書館の蔵書印です。
絵の一部ではなく、この本が図書館に収められたときに押されたものです。当店のプリントには入っていません。

一枚のプリントになるまでに、いくつの姿があったのか

現在も、『百々世草』には出版される前の姿が残されています。

『百々世草』を出版した芸艸堂は、神坂雪佳が描いた原画を現在も所蔵しています。

紙に彩色された、明治42年頃の原画です。

2025年に長崎歴史文化博物館で開催された展覧会では、そのうち十面が展示されました。

つまり、現在私たちが目にする『百々世草』をたどると、

  1. 原画神坂雪佳が原画を描く
  2. 木版その図を木版で多色摺する
  3. 画帖20図ずつ3冊の本に仕立てる
  4. 刊行『百々世草』全60図として刊行する

という姿が見えてきます。

京都の古い町家の店先

出版した会社も、まだ京都にある

『百々世草』を刊行した山田芸艸堂は、1891年、山田直三郎が京都・寺町二条で図案図譜の出版業を始めたことにさかのぼります。
1906年に本田雲錦堂と合併。
そして1909年、『百々世草』の刊行が始まりました。
現在の芸艸堂です。
100年以上前にこの本を世に出した版元が現在も存在し、その原画も所蔵しています。

『百々世草』原本3冊の表紙

残ったのは、この一枚だけではない

『百々世草』の摺り本は、現在も複数の美術館・博物館に残されています。
国内では細見美術館や京都国立近代美術館。
海外ではクリーヴランド美術館、シカゴ美術館、スミソニアン国立アジア美術館などにも収蔵されています。
クリーヴランド美術館が所蔵するのは、3巻・各20図。
つまり全60図です。

ノートパソコンの画面に『百々世草』の巻頭図を表示した画面

そして今、60図すべてを自分でめくれる

さらに面白いことに、現在は美術館へ行かなくても中身を見ることができます。
国立国会図書館デジタルコレクションでは、原本3冊の全ページが公開されています。
第1巻を開いて、この菊の図から始める。
そのまま次の図へ。
さらに次の図へ。
1909年に出版された60図を、現在でも最初から最後まで自分でめくって見ることができます。

100年以上前、この図は「壁に掛ける一枚」としてではなく、
約31cmの和装本を手元で開き、60図の最初の一枚として見る
画帖の一図として出版された。
それが『百々世草』の「もゝよ草」でした。

現在は、その一図だけを取り出して、壁の上で見ることもできます。
本の中にあった一枚を、部屋の一枚へ。
artgraph.では、ご注文ごとに1枚ずつプリントします。

サイズ・額装を選ぶ

¥1,900 から(A5・フレームなし・税込)

置いてみる

本の中では約31cm。壁では、どの大きさにする?

『百々世草』は、高さ約31cmの和装本として刊行されました。
ただし、所蔵機関によって寸法の記録方法が異なるため、今回の図そのものの見開き実寸は確定できていません。
クリーヴランド美術館では折本の1ページを29.9×22.1cm、京都国立近代美術館では第1巻を30.8×22.8cmと記録しています。

artgraph.では、原本とは異なる複数のサイズから、飾る場所に合わせて選べます。

お部屋の背景
※イメージです
この組み合わせは準備中です

受け取るもの

原本の「金と銀」と、プリントの違い

原本の金茶色と銀の境目の拡大
原本の金銀部分

ここは、原本とプリントで大きく違うところです。

1909年の原本は、金と銀を使った多色木版摺。
通常の色彩に加えて金と銀が用いられています。

一方、artgraph.の商品は、原本画像に記録された色や明暗をプリントするものです。

金属素材そのものを摺る木版とは、技法も素材も異なります。

スタッフがアートプリントを箱に入れている様子
1枚ずつ確認して梱包する擦れや折れを防ぐように包んで発送します

用紙

EPSON のアート紙・190g/m²。表面がマットで、光を反射しにくい紙です。

印刷

ジークレープリント。在庫を持たず、ご注文のたびに1枚ずつ出力します。

アート紙に刷った面と、白い余白の境目
刷り面と余白まわりの白は紙そのものの色です
大判プリンタからアートプリントが出力されている様子
1枚ずつ出力するご注文のたびに刷ります

artgraph.の商品は、原本画像に記録された色や明暗をプリントするものです。

神坂雪佳『百々世草』第1巻「もゝよ草」をウッドフレームで額装したプリントのイメージ
フレームはアルミ4色(ブラック/ホワイト/シルバー/ゴールド)とウッド3種。額装込みの価格は、上のショーケースでサイズと組み合わせるとその場に出ます。

選ぶ

サイズと価格

サイズ用紙寸法価格(フレームなし・税込)
A5148 × 210 mm¥1,900
A4210 × 297 mm¥2,400
B4257 × 364 mm¥2,800
A3297 × 420 mm¥3,800
B3364 × 515 mm¥4,200
A2420 × 594 mm¥4,800
B2515 × 728 mm¥5,800
A1594 × 841 mm¥6,800
B1728 × 1030 mm¥7,800

絵柄の縦横比は作品ごとに違うため、用紙のどこまで絵が入るかも作品×サイズごとに変わります。この作品の実寸と余白は、商品ページの「サイズ・価格表」でご確認いただけます。「余白あり」と「余白なし」を選べます。

選ぶ理由

同じ絵でも、どこで刷るかで変わります

  • 用紙と印刷方式を公開しています(アート紙190g/m²・ジークレープリント)。
  • A5からB1まで9サイズ、額装7種から選べます。壁に合わせて決められます。
  • ご注文を受けてから1枚ずつ刷る受注生産です。刷ってから送ります。
  • 原画の情報(制作年・所蔵先)を作品ごとに載せています。当社は各所蔵先と提携しておりません。プリントはパブリックドメインの図版をもとに当社が制作しています。

お届け

注文から届くまで

出荷まで(フレームなし)3営業日
出荷まで(額装込み)10営業日
配送料11,000円以上のご注文は無料
お届け先日本国内

土日祝日・弊社休業日を除く営業日数です。繁忙期はお時間をいただく場合があります。返品・交換の条件は返品ポリシー、事業者の表示は特定商取引法に基づく表記をご確認ください。

最後に、もう一度見てみてください。

神坂雪佳『百々世草』第1巻「もゝよ草」1909年・全図
神坂雪佳『百々世草』第1巻「もゝよ草」1909年 多色木版摺

いま見ているのは、一枚の菊の絵です。

でも、最初から一枚だったわけではありません。

神坂雪佳が描いた原画があり、

金と銀を含む多色木版で摺られ、

20図ずつ3冊の画帖に収められ、

60図の『百々世草』として出版された。

その最初に置かれたのが、この一枚です。

原本の目次にある名前は、「菊」ではなく、

「もゝよ草」。

1909年、本を開いた人が最初に見た一図を、

100年以上後のいまは、一枚の絵として壁に掛けることができます。

この作品を飾る

¥1,900 から(A5・フレームなし・税込)

同じ本の、ほかの図

『百々世草』を、もう少しめくる

出典

・国立国会図書館『百々世草』書誌・デジタルコレクション
・芸艸堂「芸艸堂について」
・The Cleveland Museum of Art, “Flowers of a Hundred Worlds (Momoyogusa): Chrysanthemums”
・京都国立近代美術館 所蔵品検索『百々世草』(全3巻のうち第1巻)
・長崎歴史文化博物館「つながる琳派スピリット 神坂雪佳」展示リスト
・The Art Institute of Chicago 所蔵記録
・Smithsonian National Museum of Asian Art 所蔵記録
図版について:作品の図版(「最初に現れるのが、この図です。」の全図・切り出し2点・最後の全図)は、当社が印刷に用いている原版からの切り出しで、加工も生成もしていません。ヒーローの額装イメージは、当社が販売する額装プリントの3Dモデルを描き出したものです(生成AIではありません)。国会図書館デジタルコレクション『百々世草』第1〜3巻(請求記号 406-32・パブリックドメイン)の原本画像は、表紙・目次・巻頭図・目次の拡大・金銀の拡大・3冊の表紙・朱印の拡大です。「なぜ、」の背景、京都の古い町家の店先、ノートパソコンの画面、ヒーロー背景は、当社が生成AIで作成した画像です。当時の記録写真ではありません(ノートパソコンの画面の絵は当店原版です)。
当社は各所蔵先と提携しておりません。

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