Jean-Honoré Fragonard(ジャン・オノレ・フラゴナール) は、18世紀フランスのロココ美術を代表する画家の1人です。軽妙洒脱で、享楽的な雰囲気に満ちた作品を数多く残し、「愛」と「喜び」の画家とも称されています。その作品は、柔らかな筆致と、明るく華やかな色彩、そして洗練された構図を特徴とし、当時の貴族社会の優雅な生活を、魅力的に描き出しています。

ジャン・オノレ・フラゴナール 経歴

• 1732年4月5日、フランス南部のグラースに生まれる
• 1747年頃、家族とともにパリに移住し、はじめは公証人のもとで働く
• 1748年頃、フランソワ・ブーシェのアトリエに入門し、絵画の修行を積む
• 1752年、ローマ賞を受賞し、翌年からイタリアに留学
• 1756-1761年、ローマに滞在し、古代美術やティエポロらの作品から影響を受ける
• 1761年、フランスに帰国し、パリで活動を始める
• 1765年、『コレスュスとカリロエ』が王立絵画彫刻アカデミーの会員候補作品として認められる
• しかし、その後は、私的な顧客のために、軽妙な風俗画や肖像画、風景画などを制作
• フランス革命後は、新古典主義の台頭もあり、次第に忘れられていった
• 1806年8月22日、パリにて死去(享年74歳)

代表作品

• 『ぶらんこ』(The Swing) (1767年)
• 『読書する娘』(A Young Girl Reading) (1776年頃)
• 『盗まれた接吻』(The Stolen Kiss) (1787年-1789年頃)
• 『マンドリンを弾く娘』(The Music Lesson) (1769年頃)
• 『愛の泉』(The Fountain of Love) (1785年頃)

ジャン・オノレ・フラゴナールの芸術

フラゴナールの芸術は、ロココ美術の典型的な特徴である、軽快で洗練された、享楽的な雰囲気に満ちています。彼は、貴族たちの恋愛遊戯や、田園での戯れ、神話の愛の場面などを、柔らかな筆致と、明るく華やかな色彩で描きました。その作品は、優雅で装飾性に富み、当時の貴族社会の趣味を反映しています。特に、『ぶらんこ』は、フラゴナールの代表作として知られ、軽妙な主題と、躍動感あふれる構図、そして繊細な光の表現が、見事に調和した傑作です。フラゴナールは、風俗画だけでなく、肖像画や風景画、さらには装飾画など、幅広い分野で才能を発揮しました。また、彼は、素早い筆致で、対象の本質を捉えることに長けており、その即興的な表現は、後の印象派の画家たちにも影響を与えたと考えられています。

ジャン・オノレ・フラゴナールの影響と後世への評価

フラゴナールは、その軽妙洒脱で、享楽的な画風によって、同時代の貴族たちから高い人気を博しました。しかし、フランス革命後は、ロココ美術自体が、旧体制の象徴として否定され、フラゴナールの芸術も、次第に忘れられていきました。彼の芸術が再評価されるのは、19世紀後半、印象派の画家たちが登場してからのことです。今日、フラゴナールは、ロココ美術を代表する画家の1人として、世界中で高く評価されています。「ロココ美術」「軽妙洒脱」「享楽的」「ぶらんこ」「風俗画」などのキーワードは、フラゴナールの芸術を理解する上で重要な要素です。その作品は、世界中の美術館に収蔵され、今なお多くの人々を魅了し続けています。