Paul Nash (ポール・ナッシュ)は、20世紀前半のイギリスを代表する風景画家です。モダニズムやシュルレアリスムの運動にも関わりながらも、独自のスタイルを確立しました。第一次世界大戦の従軍経験は、彼の芸術に大きな影響を与え、自然の力強さや神秘性、そして美しさを追求するようになりました。
経歴
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1889年5月11日、ロンドン郊外に生まれる
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1910年代にロンドン・グループに参加し、モダニズム運動に関わる
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第一次大戦に従軍し、戦争の惨状に衝撃を受ける
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1946年7月11日、ボーンマスで死去
代表作品
- 「われらはかれらの跡を踏み行く」("We Are Making a New World") 1918年
- 「昼下がりの夢」("Landscape from a Dream") 1936-38年
- 「モナムールのサンチュアリ」("The Solstice of the Ancients") 1943年
戦争を契機に、ナッシュは自然を力強く、時に荒涼とした有機体として捉えるようになりました。木の根株や岩石、丘などの自然物がしばしば作品に登場し、現実と幻想が交錯する夢のような雰囲気を漂わせています。
絵画の構成やイメージには、立体的な空間表現やシュルレアリスムの影響が見られます。抽象や象徴、アレゴリーといった手法を用いて、自然の深層にある意味や感情を表現しようとしました。ナッシュにとって、荒野の中の有機体は人間の内面性を映し出す鏡のような存在でした。彼は、イギリスの芸術に新風を吹き込み、20世紀の風景画に大きな影響を与えた画家として評価されています。