『フローラの神殿』は、イギリスの医師であり植物学者であったロバート・ジョン・ソーントン（1768-1837）によって1799年から1807年にかけて出版された、植物学と芸術を融合させた豪華な書籍です。特に、その第三部であり最終章でもある「カール・フォン・リンネの性的体系の新図解」は、植物の美しさと科学的な知識を結びつける試みとして高く評価されています。

ロバート・ジョン・ソーントン 経歴

• 1768年、イギリスのロンドンに生まれる。
• ケンブリッジ大学で医学を学び、医師として開業。
• 植物学に深い関心を持ち、リンネの分類体系を支持。
• 1799年から1807年にかけて、『フローラの神殿』を出版。
• 1811年、破産を宣告される。
• 1837年1月21日、ロンドンで死去（享年68歳）。

代表作品

• 『フローラの神殿』(The Temple of Flora) (1799-1807年)

本書の特徴と影響

『フローラの神殿』は、植物学的な正確性と芸術的な美しさを兼ね備えた、豪華な植物画集です。ソーントンは、当時の著名な画家たちに依頼し、美しい花々や風景を背景に、植物をドラマチックに描き出しました。

特に、「カール・フォン・リンネの性的体系の新図解」では、リンネの植物分類体系を視覚的に表現するために、雄しべや雌しべなどの生殖器官を強調した図版が描かれています。これらの図版は、植物の生殖メカニズムへの理解を深めるだけでなく、その美しさも際立たせています。

『フローラの神殿』は、出版当時、その高額な価格と豪華な装丁から、一部の富裕層にしか手が届かないものでした。しかし、その科学的価値と芸術性の高さから、現在では植物画の傑作として、また、18世紀後半から19世紀初頭のイギリス文化を象徴する作品として、高く評価されています。