ミュシャ畢生の大作『スラヴ叙事詩』全20作品を徹底解説!鑑賞できる場所は?
アール・ヌーヴォーを代表する芸術家、アルフォンス・ミュシャ。華麗な女性像や植物モチーフのポスターで世界を魅了した彼が、人生の後半すべてを捧げた壮大なプロジェクトがあることをご存知でしょうか。それが、スラヴ民族の苦難と栄光の歴史を描いた全20点の連作油彩画『スラヴ叙事詩』です。
この記事では、美術品の専門ショップとして多くのお客様にミュシャ作品をお届けしてきた私たち「artgraph」が、ミュシャの魂の結晶ともいえる『スラヴ叙事詩』の全貌を、全20作品の解説とともに紐解きます。「『スラヴ叙事詩』はどこで見れるの?」という疑問にもお答えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
ミュシャが18年の歳月をかけて完成させた壮大な物語
アルフォンス・ミュシャの魂の叫び『スラヴ叙事詩』とは?
『スラヴ叙事詩』(The Slav Epic)は、アルフォンス・ミュシャが1910年から1928年にかけての約18年間を費やして制作した、全20点の巨大なカンヴァスからなる連作絵画です。その大きさは最大で縦6メートル、横8メートルにも及びます。ミュシャは、かつて舞台女優サラ・ベルナールのポスターで一世を風靡し、商業デザイナーとして大きな成功を収めましたが、彼の心には常に故郷チェコと、スラヴ民族全体への強い愛国心がありました。
彼は自らの芸術の集大成として、スラヴ民族の神話の時代から近代史に至るまでの重要な出来事を描き、民族のアイデンティティと精神的支柱を築くことを目指したのです。この壮大な計画は、アメリカの富豪でスラヴ文化に関心のあったチャールズ・R・クレインの資金援助によって実現しました。
アルフォンス・ミュシャ作『スラヴ叙事詩』全20作品を一覧で解説
『スラヴ叙事詩』は、大きく「神話・伝説の時代」「中世の栄光と苦難」「近代の闘争と希望」というテーマに分けることができます。ここでは特に重要な作品をピックアップし、全20作品の主題とともにご紹介します。
1. 原故郷のスラヴ民族
制作年: 1912年
主題: スラヴ民族の起源。侵略者に脅かされ、平和を祈る男女の姿が描かれています。シリーズの序章となる、象徴的な作品です。
5. ブルガリア皇帝シメオン
制作年: 1923年
主題: 第一次ブルガリア帝国の黄金時代を築いたシメオン1世。スラヴ語の文献を集め、文化の発展に貢献した「スラヴ文学の暁の星」として描かれています。
10. グリュンヴァルトの戦いの後
制作年: 1924年
主題: 1410年、ポーランド・リトアニア連合軍がドイツ騎士団に勝利した歴史的な戦い。勝利の歓喜だけでなく、戦争の犠牲への哀悼の念が込められています。
20. スラヴ民族の歴史の神格化
制作年: 1926年
主題: シリーズの最終作。スラヴ民族の苦難の歴史(青)、栄光の歴史(赤)、そしてチェコスロヴァキア独立後の未来への希望(黄色)を象徴的に描き、民族の統合と平和を謳い上げています。
これら以外にも、全20作品はそれぞれが壮大な物語を内包しています。
| No. | 作品名 | 制作年 |
|---|---|---|
| 1 | 原故郷のスラヴ民族 | 1912 |
| 2 | ルヤナ島のスヴァントヴィート祭 | 1912 |
| 3 | スラヴ式典礼の導入 | 1912 |
| 4 | ブルガリア皇帝シメオン | 1923 |
| 5 | ボヘミア王オタカル2世 | 1924 |
| 6 | セルビア皇帝ステファン・ドゥシャンの戴冠 | 1926 |
| 7 | クレムニツェのヤン・ミリーチ | 1916 |
| 8 | ベツレヘム礼拝堂で説教するヤン・フス | 1916 |
| 9 | クジーシュキでの集会 | 1916 |
| 10 | グリュンヴァルトの戦いの後 | 1924 |
| 11 | ヴィートコフ山の戦いの後 | 1923 |
| 12 | ヴォドニャヌイのペトル・ヘルチツキー | 1918 |
| 13 | フス派の王イジー | 1923 |
| 14 | ニコラ・シュビッチ・ズリンスキーによるシゲトの防衛 | 1914 |
| 15 | クラリツェ聖書の印刷 | 1914 |
| 16 | ヤン・アーモス・コメンスキーのナールデンでの最後の日々 | 1918 |
| 17 | 聖アトス山 | 1926 |
| 18 | スラヴ菩提樹の下でのオムラジナ会の誓い | 1926 |
| 19 | ロシアの農奴制廃止 | 1914 |
| 20 | スラヴ民族の歴史の神格化 | 1926 |
アルフォンス・ミュシャの『スラヴ叙事詩』はどこで見れる?
これほど壮大な作品群、ぜひ実物を見てみたいと思いますよね。長年、プラハ国立美術館が所蔵していましたが、2021年以降、展示場所が変更されています。
現在の主な展示場所: モラフスキー・クルムロフ城(チェコ共和国)
2021年より、ミュシャが『スラヴ叙事詩』を寄贈する条件とした専用の展示館がプラハに建設されるまでの間、この作品が制作されたゆかりの地であるモラフスキー・クルムロフ城で、少なくとも5年間展示されることになりました。
訪問を計画される際は、必ず公式サイトで最新の開館情報をご確認ください。
過去には、2017年に日本の国立新美術館で「ミュシャ展」が開催され、全20作品がチェコ国外で初めて一堂に会し、大きな話題となりました。日本での人気の高さがうかがえます。再び日本で鑑賞できる機会が待たれますね。
なぜ『スラヴ叙事詩』はアルフォンス・ミュシャの最高傑作なのか?
『スラヴ叙事詩』は、単なる歴史画の連作ではありません。アール・ヌーヴォーの華やかな装飾性と、歴史画の重厚なリアリズム、そしてミュシャ独特の象徴主義が見事に融合した、唯一無二の芸術作品です。ミュシャは、ポスター画家としてのキャリアで培ったデザイン力、構図の妙をこの大作に注ぎ込みました。
しかし、それ以上に重要なのは、この作品に込められたミュシャの精神性です。彼は民族の誇りと平和への強い願いをカンヴァスに刻み込みました。それは、商業的な成功の先に見出した、芸術家としての真の使命だったのです。
「artgraphでミュシャのポスターを購入しました。『スラヴ叙事詩』の作品があると知り、その壮大さに感動。一枚飾るだけで、部屋に歴史の深みと物語が生まれるようです。」
- artgraph ご購入者様の声
私たちartgraphは、こうしたミュシャの情熱をお客様にお届けしたいと考えています。彼の作品が持つ装飾的な美しさだけでなく、その背景にある物語や想いを知ることで、アートはもっと深く楽しめるものになります。
まとめ:ミュシャの魂の旅路『スラヴ叙事詩』を自宅で楽しむ
アルフォンス・ミュシャの畢生の大作『スラヴ叙事詩』は、彼の芸術家人生の集大成であり、スラヴ民族への愛と平和への祈りが込められた壮大な叙事詩です。全20作品を通して、私たちは歴史のうねりと、それに翻弄されながらも力強く生きた人々の姿を見ることができます。
チェコのモラフスキー・クルムロフ城で鑑賞するのが理想ですが、なかなか現地へ足を運ぶのは難しいかもしれません。しかし、高品質なアートポスターや画集を通して、その壮大な世界観の一端に触れることは可能です。
artgraphでは、アルフォンス・ミュシャの代表的なポスター作品をはじめ、彼の芸術性を存分に楽しめるアイテムを多数取り揃えています。『スラヴ叙事詩』でミュシャの奥深い世界に魅了された方は、ぜひ他の作品もご覧ください。
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