Henri Rousseau(アンリ・ルソー) は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの素朴派の画家です。「日曜画家」として独学で絵画を学び、その独特な画風は生前は一部の芸術家にしか理解されませんでしたが、没後に再評価され、20世紀の美術に大きな影響を与えた芸術家の一人となりました。特に、熱帯のジャングルを舞台にした幻想的な作品群は、多くの人々を魅了し続けています。
アンリ・ルソー 経歴
- 1844年5月21日、フランスのラヴァルに生まれる
- 1871年頃からパリの入市関で税関吏として働き始める
- 1886年、アンデパンダン展に初めて出品、以降毎年出品を続ける
- 1893年、税関を退職し、画業に専念する
- 1908年、パブロ・ピカソらによって「ルソーを讃える宴」が開かれる
- 1910年9月2日、パリにて死去(享年66歳)
代表作品
- 『眠るジプシー女』(The Sleeping Gypsy) (1897年)
- 『蛇使いの女』(The Snake Charmer) (1907年)
- 『夢』(The Dream) (1910年)
- 『戦争』(War) (1894年)
アンリ・ルソーの画風
アンリ・ルソーの画風は、素朴派を代表するもので、遠近法や解剖学などの伝統的な絵画技法にとらわれない、自由で独創的な表現が特徴です。特に、熱帯のジャングルをモチーフにした一連の作品は、現実には存在しない幻想的な風景を緻密な描写で描き出し、見る者を不思議な世界へと誘います。また、人物や動物はしばしば正面を向いて描かれ、その素朴な表現は、見る者に強い印象を与えます。
代表作解説
代表作の『眠るジプシー女』では、砂漠の静寂の中、ライオンが眠る女性を見つめるという非現実的な場面が描かれています。この作品は、ルソーの幻想的な世界観を象徴する作品と言えるでしょう。『夢』は、ルソーの最後の作品であり、熱帯の植物が生い茂るジャングルの中で、裸の女性がソファに横たわるという、さらにシュールな情景が描かれています。
アンリ・ルソーの影響と後世への評価
アンリ・ルソーは、生前は「日曜画家」として、一部の先進的な芸術家を除いて、広く認められることはありませんでした。しかし、その独創的な画風は、パブロ・ピカソやワシリー・カンディンスキーなどの20世紀を代表する画家たちに大きな影響を与えました。特に、シュルレアリスムの画家たちは、ルソーの幻想的で非現実的な世界観に強く共鳴しました。今日、アンリ・ルソーは、20世紀美術の先駆者の一人として高く評価されており、素朴派、エキゾチシズム、幻想絵画、シュルレアリスム、ジャングル などのキーワードは、ルソーの芸術を理解する上で欠かせない要素です。その作品は、世界中の美術館に収蔵され、今なお多くの人々に愛され続けています。