Kazimir Malevich(カジミール・マレーヴィチ) は、20世紀初頭にロシアで活躍した、抽象絵画の先駆者です。「シュプレマティズム」と呼ばれる、独自の芸術運動を創始し、純粋な幾何学的形態と色彩による、非対象絵画の可能性を追求しました。特に、その代表作である『黒の正方形』は、絵画における究極的な抽象性を実現した作品として、美術史上に大きな足跡を残しています。

カジミール・マレーヴィチ 経歴

• 1879年2月23日(ユリウス暦2月11日)、ロシア帝国領ウクライナのキエフ近郊に生まれる
• 1895-1896年、キエフの美術学校で絵画を学ぶ
• 1904年、モスクワに移り、モスクワ美術学校に入学
• 1910年代初頭、ロシア未来派の展覧会に参加し、キュビスムやフォーヴィスムの影響を受けた作品を発表
• 1915年、「最後の未来派絵画展0,10」を開催し、『黒の正方形』などのシュプレマティズムの作品を発表
• ロシア革命後は、美術教育や舞台美術などの分野で活動
• 1927年、ドイツのバウハウスで講義を行う
• 晩年は、スターリン体制下で、社会主義リアリズムに沿った具象画の制作を余儀なくされる
• 1935年5月15日、レニングラード(現在のサンクトペテルブルク)にて死去(享年57歳)

代表作品

• 『黒の正方形』(Black Square) (1915年)
• 『白の上の白』(White on White) (1918年)
• 『シュプレマティスト・コンポジション』(Suprematist Composition) (1916年頃)
• 『赤の正方形』(Red Square (Painterly Realism of a Peasant Woman in Two Dimensions)) (1915年)
• 『飛行機が飛ぶ』(Airplane Flying) (1915年)

カジミール・マレーヴィチの芸術

マレーヴィチの芸術は、純粋な幾何学的形態と色彩による、非対象絵画の可能性を追求したことに、大きな特徴があります。彼は、それまでの絵画が、現実世界の再現や、物語の描写などに縛られてきたことを批判し、絵画を、純粋な造形要素だけで構成される、自律的な存在にしようとしました。その芸術理念は、「シュプレマティズム」(絶対主義、至高主義)と呼ばれ、1915年に発表された『黒の正方形』によって、その究極的な形が示されました。この作品は、白い背景の上に、黒い正方形だけが描かれたもので、絵画におけるあらゆる対象性や意味性を排除した、抽象絵画の金字塔とされています。マレーヴィチは、その後も、『白の上の白』などの作品を通じて、シュプレマティズムの理論をさらに深化させていきました。

カジミール・マレーヴィチの影響と後世への評価

マレーヴィチは、その革新的な芸術によって、20世紀の美術、特に抽象絵画の発展に、決定的な影響を与えました。彼のシュプレマティズムは、ロシア構成主義や、デ・ステイルなどの、その後の抽象芸術運動に、大きな影響を与えました。また、その絵画における究極的な抽象性の追求は、ミニマル・アートなどの、後の現代美術にも、影響を与えたと考えられています。今日、マレーヴィチは、20世紀美術を代表する芸術家の1人として、世界中で高く評価されています。「シュプレマティズム」「抽象絵画」「非対象絵画」「黒の正方形」「絶対主義」などのキーワードは、マレーヴィチの芸術を理解する上で重要な要素です。その作品は、世界中の美術館に収蔵され、今なお多くの人々を魅了し続けています。