こんにちは!artgraph.店長のマツムラです。「アートをもっと身近に」をコンセプトに、心豊かな暮らしを彩るアートの魅力をお届けしています。
ゴッホの「ローヌ川の星月夜」が描く、静かで美しい夜の情景に心惹かれたことはありませんか? 水面に映るガス灯の光が印象的なこの作品は、どのようにして生まれたのでしょうか? この記事では、南仏アルルの夜を描いた「ローヌ川の星月夜」の制作背景、色彩や構図の魅力、そしてもう一つの有名な「星月夜」との違いについて、アート専門店の視点から詳しく解説します。この美しい夜景に込められたゴッホの想いや、作品が放つ詩情を感じ取っていただければ幸いです。

ゴッホ「ローヌ川の星月夜」とは?基本情報
まずは、この魅力的な作品の基本的な情報をおさえておきましょう。
- タイトル: ローヌ川の星月夜 (Starry Night Over the Rhône / La Nuit étoilée)
- 作者: フィンセント・ファン・ゴッホ (Vincent van Gogh)
- 制作年: 1888年
- 制作場所: フランス、アルル
- 技法・素材: 油彩、カンヴァス
- 寸法: 72.5 × 92 cm
- 所蔵: オルセー美術館(フランス、パリ)
いつ、どこで描かれた?制作年(1888年)と場所(アルル)
「ローヌ川の星月夜」は、ゴッホが南フランスのアルルに滞在していた1888年9月に描かれました。彼はこの地で画家の共同体を作ることを夢見ており、アルルの明るい光と色彩に魅了されていました。この作品は、ローヌ川の東岸、ゴッホが借りていた「黄色い家」から歩いて数分の場所で制作されたと言われています。
作品はどこにある?所蔵美術館(パリ、オルセー美術館)
この傑作は現在、フランス・パリにあるオルセー美術館に所蔵されています。印象派やポスト印象派のコレクションで世界的に有名な美術館であり、「ローヌ川の星月夜」は多くの来館者を魅了する重要な作品の一つです。
アルルの夜を描く:制作背景とゴッホの探求
ゴッホはなぜ、夜の情景を描こうとしたのでしょうか。その背景には、彼の芸術的探求がありました。
なぜ夜景を?ゴッホの「夜の効果」への関心
ゴッホは、日中の明るい光だけでなく、「夜の効果(effet de nuit)」にも強い関心を寄せていました。彼は夜空の色彩、星の輝き、人工的な光(ガス灯など)が作り出す独特の雰囲気をカンヴァスに捉えようと試みました。彼は、夜は昼間よりも色彩が豊かで、より生き生きとしていると感じていたようです。
「夜景や『夜の効果』そのものを描くことに、とてつもなく惹かれているんだ」 (弟テオへの手紙より、ゴッホの言葉を意訳)
暗闇を単なる黒で表現するのではなく、深い青や紫、緑などの色彩を用いて、夜の持つ深遠さや神秘性を表現しようとしたのです。
実際に描かれたローヌ川岸の場所は?
ゴッホがこの絵を描いたのは、アルルのローヌ川東岸、ラマルティーヌ広場(Place Lamartine)のすぐ南側、川が南東にカーブする地点の岸辺から対岸を望む場所と考えられています。当時の川岸は現在とは少し様子が異なるかもしれませんが、今でも多くの美術愛好家がこの地を訪れ、ゴッホが見たであろう風景に思いを馳せています。

弟テオへの手紙から知る制作の情熱
ゴッホは、弟のテオに宛てた手紙の中で「ローヌ川の星月夜」について熱心に語っています。1888年9月29日付の手紙では、次のように描写しています(意訳)。
「同封したのは、星空の下で描いた小さなスケッチだ。[...] 空はアクアマリン、水はロイヤルブルー、地面は藤色。街は青と紫。ガス灯は黄色で、その反射は赤みがかった金色から緑がかったブロンズ色へと変化する。アクアマリンの空には、大熊座がきらめく緑とピンク色で描かれ、その控えめな輝きがガス灯の荒々しい金色と対比をなしている。手前には、二人の小さな恋人たちの姿がある。」
この手紙からは、ゴッホが夜景の色彩をいかに注意深く観察し、感動をもって捉えていたかが伝わってきます。
光と色彩が織りなす詩情:「ローヌ川の星月夜」の見どころ
この作品には、観る者の心を引きつけてやまない魅力的な要素がいくつもあります。
吸い込まれるような夜空:深い青と星々の表現
まず目を引くのが、深遠な夜空の表現です。コバルトブルーやプルシアンブルーといった深い青色が、夜の静寂と無限の広がりを感じさせます。その中に輝く星々は、黄色や白の力強いタッチで描かれ、まるで夜空で瞬いているかのようです。特に画面上部には、北斗七星(大熊座の一部)がはっきりと描かれており、ゴッホが実際の星空を観察していたことがうかがえます。

水面に映る幻想的な光:ガス灯と星の反射
ガス灯の暖かな光と水面の揺らめく反射
「ローヌ川の星月夜」の水面に映るガス灯の光のディテール
対岸の街並みから放たれるガス灯の光と、それがローヌ川の水面に映り込む様子は、この絵の大きな見どころです。ゴッホは、ガス灯の強いオレンジがかった黄色と、その光が水面で揺らめきながら広がる様子を、独特の筆致で捉えています。星々の光もまた水面に反射し、夜空と水面が一体となった幻想的な空間を生み出しています。光の表現は、暗闇の中の希望や温かさを象徴しているようにも感じられます。
静かな夜の物語:手前の恋人たちの存在
手前に描かれた恋人たちが詩情を添える
「ローヌ川の星月夜」の手前に描かれた恋人たちのディテール
画面手前の岸辺には、寄り添う男女の後ろ姿が小さく描かれています。この恋人たちの存在は、広大な夜景に人間的な温かみと物語性を与えています。彼らは静かに夜景を眺めているのでしょうか。観る者は、彼らと同じ視点からこの美しいアルルの夜を共有するような感覚を覚えます。この人物描写が、作品にロマンチックで詩的な雰囲気をもたらしています。
もう一つの傑作と比較:「星月夜」(MoMA所蔵)との違い
ゴッホにはもう一つ、非常に有名な「星月夜」という作品があります。ニューヨーク近代美術館(MoMA)に所蔵されているこの作品と、「ローヌ川の星月夜」はどう違うのでしょうか。

描かれた時期と場所の違い(アルル vs サン=レミ)
まず大きな違いは、描かれた時期と場所です。
- ローヌ川の星月夜: 1888年9月、南仏アルルにて、比較的精神状態が安定していた時期に屋外で描かれました。
- 星月夜 (MoMA): 1889年6月、アルルでの耳切り事件の後に入院したサン=レミ=ド=プロヴァンスの精神療養所の窓から見える(あるいは想像した)風景を描いたとされています。
表現の違い:写実性 vs 感情表現、色彩、筆致など
表現方法にも顕著な違いが見られます。
- ローヌ川の星月夜: アルルの実際の夜景に基づいており、比較的写実的で穏やかな印象を与えます。色彩は深い青とガス灯の黄色が対照的ですが、全体としては落ち着いたトーンです。筆致も、水面の反射などに特徴的なタッチは見られるものの、MoMA版ほど激しくはありません。
- 星月夜 (MoMA): 夜空の渦巻くような描写や、燃え上がるような糸杉など、ゴッホの内面的な感情や幻視が色濃く反映されています。色彩はより濃密で、青と黄色が激しくぶつかり合い、ダイナミックで感情的な筆致が画面全体を覆っています。
「ローヌ川の星月夜」が現実の風景の詩情を捉えようとしたのに対し、「星月夜(MoMA)」はゴッホ自身の内なる宇宙や精神性を投影した作品と言えるでしょう。
どちらも魅力的!それぞれの作品が放つ個性
これら二つの「星月夜」は、描かれた状況や表現方法は異なりますが、どちらもゴッホの代表作であり、夜空への深い関心と卓越した表現力を示しています。「ローヌ川の星月夜」は静謐な美しさ、「星月夜(MoMA)」は荒々しい生命力が、それぞれの魅力となっています。
心安らぐ夜景をお部屋に:アートポスター/パネルで楽しむゴッホ
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「ローヌ川の星月夜」が空間にもたらす落ち着き、ロマンチックな雰囲気
「ローヌ川の星月夜」は、その深い青色と穏やかな光の表現により、空間に落ち着きと静けさをもたらします。寝室や書斎など、リラックスしたい場所に飾るのに最適です。また、描かれた恋人たちの姿や幻想的な雰囲気は、リビングなどにロマンチックなムードを添えてくれるでしょう。眺めているだけで、まるで南仏アルルの星降る夜に佇んでいるかのような気分に浸れます。
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まとめ:ゴッホが描いた夜の美しさを、もっと身近に
フィンセント・ファン・ゴッホの「ローヌ川の星月夜」は、南仏アルルの穏やかで詩的な夜景を見事に捉えた傑作です。深い青の夜空、水面に映るガス灯の温かい光、そして遠くで輝く星々。これらの要素が組み合わさり、観る者の心に静かな感動を与えてくれます。有名な「星月夜」(MoMA所蔵)とは異なる魅力を持ち、ゴッホの夜景への探求心を感じさせる作品です。
この記事を通して、「ローヌ川の星月夜」の背景や見どころ、魅力について理解を深めていただけたなら幸いです。artgraph.では、この素晴らしいアートを、ポスターやキャンバスのアートパネルとして、もっと気軽に楽しんでいただけるようご提案しています。ぜひ、あなたのお気に入りの空間に、ゴッホが描いた美しい夜のひとかけらを加えてみませんか?