【謎に迫る】クロード・モネ「日傘の女」のモデルは誰?妻カミーユと継娘シュザンヌの物語を徹底解説
こんにちは、「アートをもっと身近に」をコンセプトに、印象派の名画を中心とした高品質なアートポスターやファブリックパネルを扱う専門店「artgraph.」店長のマツムラです。日々、お客様にアート作品をご紹介する中で、最も多くご質問いただくのが、モネの代表作『日傘の女』についてです。爽やかな光の中に立つ女性は一体誰なのでしょう?実は複数枚あるこの名画、描かれたモデルの謎に迫ってみませんか?この記事では、有名な『日傘の女』に描かれたモデルの正体と、作品に込められたモネの想いを詳しく解説します。複数存在する作品の違いもスッキリわかりますよ。
光あふれる名画「日傘の女」とは?
クロード・モネ(1840-1926)による「日傘の女」は、印象派を代表する作品の一つとして世界中で愛されています。明るい陽光の下、白いドレスを着た女性が白い日傘を差している姿は、まさに「光の画家」モネの真骨頂といえるでしょう。
しかし、多くの方がご存じないのは、「日傘の女」と呼ばれる作品は実は1点ではなく、時代の異なる複数の作品があるということです。それぞれ異なるモデルが描かれ、制作された背景にもモネの人生の物語が隠されています。

最初のモデル:最愛の妻カミーユと息子ジャン
作品名:散歩、日傘をさす女(La Promenade, La Femme à l'Ombrelle)
制作年:1875年
所蔵:オルセー美術館(フランス・パリ)
サイズ:100cm × 81cm
モデル:カミーユ・モネ(画家の最初の妻)と息子ジャン
1875年に描かれた最初の「日傘の女」は、正式には「散歩、日傘をさす女」というタイトルが付けられています。この作品に描かれているのは、モネの最愛の妻カミーユ・ドンシュー・モネと、当時4歳だった長男のジャンです。
カミーユは、モネが19歳の時に出会い、1870年に結婚した女性。彼女は多くのモネの作品のモデルとなりました。この作品では、丘の上に立ち、風に煽られる白いドレスと日傘を身にまとうカミーユの姿が、まさに印象派らしい瞬間の美しさを捉えています。画面の左下には息子のジャンの姿もわずかに描かれています。
空の青さと草原の緑が鮮やかに対比され、風の存在を感じさせる筆致は、屋外での制作を重視したモネの画風を象徴しています。カミーユは画面に向かって左を向いており、後ろからの光を浴びて立っています。
カミーユ・モネ(1847-1879)は、モネの多くの作品のモデルとなっただけでなく、彼が最も困難な時期を支えた伴侶でした。1879年、わずか32歳という若さで病死したカミーユの死は、モネに深い悲しみをもたらしました。
10年後に再び描かれた「日傘の女」
カミーユの死から約7年後の1886年、モネは再び「日傘の女」のテーマに戻り、今度は2枚の作品を描きました。片方は女性が右を向いている構図、もう片方は左を向いている構図です。

作品名:右向きの女性と日傘/左向きの女性と日傘(Femme à l'Ombrelle tournée vers la droite/gauche)
制作年:1886年
所蔵:オルセー美術館(フランス・パリ)
サイズ:各131cm × 88cm
モデル:シュザンヌ・オシュデ(モネの継娘)
後の作品のモデルは誰?継娘シュザンヌ・オシュデ
1886年に描かれた2枚の「日傘の女」のモデルは、モネの継娘シュザンヌ・オシュデです。シュザンヌは、カミーユの死後にモネが再婚相手として選んだアリス・オシュデの娘でした。
実はモネとアリスの関係は、カミーユが生きている頃から始まっていたとも言われています。アリスは6人の子どもを持つ既婚女性でしたが、夫のアーネストはモネの後援者であり、両家は近所に住んでいました。カミーユの死後、アリスは夫と別れ、1892年にモネと正式に結婚しました。
シュザンヌ・オシュデ(1868-1899)は、モネの継娘であると同時に、後に彼の息子ジャン・モネの妻となります。彼女もまた若くして亡くなりましたが、モネの重要なモデルの一人として、多くの作品に登場しています。
モネがシュザンヌをモデルに選んだ理由としては、彼女の若さと美しさに加え、家族としての絆も大きかったでしょう。また、芸術的観点からは、彼女の容姿や立ち姿がカミーユを彷彿とさせる部分があったことも指摘されています。
なぜモネは「日傘の女」を再び描いたのか?
モネが10年以上の時を経て「日傘の女」のテーマに戻った理由については、いくつかの考察があります。
まず第一に、亡き妻カミーユへの想いが挙げられます。シュザンヌをモデルにしながらも、かつて愛した妻との思い出の場面を再現することで、モネは過去と現在を結びつけようとしたのかもしれません。
第二に、光の表現の追求です。1880年代半ばのモネは、印象派としての技法をさらに発展させ、より鮮やかで複雑な光の表現に挑戦していました。同じモチーフを時間を隔てて描くことで、自らの絵画表現の進化を確認したかったとも考えられます。
また、興味深いのは1886年版では右向きと左向きの2枚を対になるように制作したことです。これは単なる構図の実験ではなく、同じ瞬間を異なる視点から捉えることで、印象派が大切にした「瞬間の美」をより深く表現しようとした試みかもしれません。
比べてわかる!二つの時代の「日傘の女」の違い
1875年のカミーユ版と1886年のシュザンヌ版では、同じテーマながらも多くの違いが見られます。
モデルの違い:カミーユとシュザンヌは体型や雰囲気が異なります。カミーユの方がやや丸みを帯びた柔らかな印象があるのに対し、シュザンヌはスレンダーでエレガントな印象を与えます。
筆致の違い:1875年の作品は比較的落ち着いた筆致で描かれていますが、1886年の2作品ではより大胆で活発な筆のタッチが見られます。特に空や草原の表現において、より印象派らしい色彩分割の技法が際立っています。
色彩の違い:後期の作品では全体的に色彩がより鮮やかになり、光と影のコントラストが強調されています。特に青色の使い方がより豊かになっており、モネの色彩表現の進化が感じられます。
サイズの違い:1886年の作品は1875年のものより大きく描かれており、より壮大な印象を与えます。
構図の違い:1875年の作品では息子ジャンが画面に含まれているのに対し、1886年の作品では女性一人のみが描かれています。
「日傘の女」はどこで見れる?
これらの「日傘の女」シリーズは、現在パリのオルセー美術館に所蔵されています。オルセー美術館は印象派コレクションで世界的に有名であり、モネの作品を多数所蔵しています。
日本でも、これまで様々な印象派展やモネ展でこれらの作品が紹介されてきました。特に1875年のカミーユ版は人気が高く、多くの展覧会で展示されてきました。今後の展覧会情報は各美術館のウェブサイトでチェックすることをおすすめします。
物語を暮らしの中に:「日傘の女」のアートポスター/パネル
誰もが一度は目にしたことがある名画「日傘の女」。その魅力は、単に美しい風景画というだけでなく、モネと彼の家族の物語が込められていることにあります。妻カミーユへの愛情、彼女の死、そして新しい家族との絆。そんな人生の喜びと悲しみが、光あふれる美しい筆致の中に表現されています。
そんな意味深い作品を、ご自宅に飾ってみませんか?光と愛に満ちたモネの「日傘の女」をリビングや寝室に飾れば、日常空間に優しい彩りと物語を加えることができます。
artgraph.では、高品質な印刷技術で再現した「日傘の女」のアートポスターとアートパネル(キャンバス)をご用意しています。特に1875年のカミーユをモデルにした作品は、柔らかな色合いと親しみやすい印象から、お客様に最も人気のある一枚です。

お部屋の雰囲気や好みに合わせて、ポスターやキャンバスパネルなど、様々な形でお楽しみいただけます。